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2011.06.16 *Thu

B級映画から始まる恋

以前書いたものです。
更新するのが面倒なので(オイ)こちらでアップ。
ちょーっとドロドロな感じなので苦手な方は要注意です。


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「何や、ねェさん。人でも刺してきたんか?」

眼の前の男は笑いながらそう言った。





全ての事の起こりは3か月前。同じ職場の同僚であり、彼氏でもある男から呼び出された。
付き合って4年になるその男とは結婚の約束を交わしており、式のことなど諸々を話し合っていた矢先の出来事だった。

「…いま、何て言ったの」

震える唇から何とか紡いだ言葉。声が震えていない自信はなかった。
どこにでもありそうな喫茶店のテーブル席。向かい側に座っているのは結婚の約束までした男と、顔見知りの女。
男の方は気まずげに顔を伏せ、女の方は瞳に涙をためて今にも泣き出しそうなほど。
泣きたいのはこっちだっての。女にぶつけてやりたかった。

「こいつとの間に子供ができた」
「――それはつまり?」
「お前との結婚をなかったことにしたい」
「ふうん…」

結婚すると決めてから、喧嘩が絶えなかった。お互いにマリッジブルーだったのだと思う。
それでも二人で結婚に向けてとことん話し合ってきた。―――少なくとも、私はそのつもりだった。

「つまりあんたは私と喧嘩している間にその子にホイホイついていって、しかも結婚が決まっているのにそういうことをしたわけ」
「…言っとくが俺だけが悪いんじゃなくて、お前も悪い」
「はあ?私のどこがどう悪いの」

愛していた。それなのに、こんなことになった一端は私にもあるという。
馬鹿抜かせ。説明してみろという目で男を見れば、奴は再び馬鹿を抜かした。

「お前、弱いところ見せないだろ。俺がいなくてもやっていけそうだし。だけどこいつは俺がいないとだめなんだよ」

男の言葉に隣りの女が感極まったように涙をこぼす。B級映画を見せられているようで気分は最悪。
見ているこちらからすれば女の涙すら嘘だとわかる。それがこの男にはわからないのだ。そして私の気持ちも、この男にはわからないのだろう。
誰が必要としない人間と4年も付き合うだろう。誰が、必要としない人間と結婚しようなんて思うのだろう。
どうして私が喧嘩が続いても結婚に向けて話し合ってきたのか、ぜんぶぜんぶ全部、この男にはわからないのだ。

「ごめ、んなさいっ…私ずっとこの人のこと好きで、麻衣子さんと結婚するのも知ってたのに、それでもいいからって私から誘ったの…っ。もし子供ができても堕ろすからって…!」

“もし子供ができても“?そんな言葉にこの男はころりといったわけか。揃いもそろって馬鹿ばかり。
子供ができても堕ろすわけないだろうが。むしろ認知しなくてもいいから産ませてくれぐらい言うだろうこの女なら。
そんなことになったら今度は男の体裁が悪くなるし、男の方も女の涙に絆されてすでに気持ちは傾いていた。
B級映画並みにくだらないな、こいつらも私も。

「……もう、いいよ。好きにしたら?――それで?式は挙げるの?もし挙げるのなら、その時は私も呼んでちょうだいね」

笑顔を作ってそう言った瞬間、女の目からぼろぼろと大粒の涙が零れだす。恐らく私の口からそんな言葉が出るとは思ってもいなかったに違いない。
男も私の言葉を想像していなかったみたいで暫く呆然としていたけれど、正気に戻ったとき小さく「悪かった…」と謝罪を口にした。
私はその様子をどこか他人事のように見つめていた。






そして、今日のこの日。あの二人の結婚式を迎えた。天候は曇り。予報では雪が降るかもしれないという。
結婚式はこじんまりとしたものだった。ま、自業自得だけど。なんせ婚約者がいた男を寝とったわけですから。
そんなことをつらつら考えている私は今まさに記帳の最中、なのだけれど、周囲の視線がビシビシ私に刺さっているのがよくわかる。
受付の人間も唖然とした表情で私を見ているくらいなのだから、これがどれほど常識から逸脱しているか考えるまでもないだろう。

「(でもね、これは復讐なの。)」

未だ呆然としている受付ににっこりとほほ笑んで私は会場へと足を進めた。その間にも周りの目は容赦なく私に突き刺さる。
ウエディングドレスと見まがうばかりの上質な白いドレス。それが、今私が着ているものだ。
結婚式で白を着ていいのは花嫁だけというのが世間の常識。――けれど、それがどうした。
これは私の復讐。討ち入りが成功するかどうかは運次第。だけどこっちも刺される覚悟をしてきたのだから。
どのような結果に終わっても、私はそれを実行するだけ。

決められていた席に着くとすでに座っていた女の子たちが一瞬驚いた表情をしたあと楽しそうに相好を崩した。
「きれいなドレスですね」とか「どうして白を着ているんですか?」とか散々話しかけられたけれど、「事情があるのよ」と意味深に笑ってみせた。
その瞬間彼女たちのテンションはもっと上がったようだった。

「それでは、新郎新婦のご入場です」

さあ、待ちかねた時がやってくる。




*



結論から言おう。私の討ち入りは無事に成功した。
正直女のウエディングドレスを見た時、勝ったと思った。女の方のドレスが悪いというわけではないが、どう見ても私のドレスの方が見栄えが良かった。女は私のドレスを目にうつした瞬間愕然としたようで、次いで物凄い形相でこちらを睨みつけてきたし、男の方は私のドレスアップ姿から目を逸らせないようだった。当然か、別れなければ私が横に立っていたのだから。

一生忘れないように、刻みつけておけばいい。幸せな良い結婚式になんてさせない。

二人のあの表情を見てからタイミングを見て式場から抜け出した。というか式場の人間から体よく追い出されたと言うべきか。
まあそろそろ潮時かなと思っていたころだったので丁度よかったのだけれど。
式場の人は私に何も言わなかった。恐らく何があったかは察していたのだろう。会場を出るときに引出物を貰ったが、すぐにゴミ箱に突っ込んだ。商品に罪はないんだけれど欲しくないものを貰っても仕方ない。


そして、冒頭に戻る――わけだが。
私は真白なドレスのまま寒空の下公園のベンチに座って、目の前の見知らぬ男を凝視していた。

「なんで…」
「顔見ればわかるよって」
「――そんなに酷い顔してる?」

自分で自分を見ることはできないから、気になって訊ねる。すると男はすこし首を傾げて「いや?ちゃんときれいな顔やで」と意味不明な回答をくれた。
――ますます混乱するのだけれど。じゃあどういう意味なの、と改めて訊ねてみると男は眉を下げて申し訳なさそうに笑う。

「すまんすまん、言い方が悪かったわ。顔やなくて、目、やね。虚ろな目しとるし。あとは、そうやなあ……。ねェさん、後悔してるように見えるし、な」
「……、」

後悔。私は後悔しているのだろうか…。いや、後悔はしていないと思う。かといって満足感もないけれど。後に残ったのは空虚な気持だけ。

「……後悔、しているように見えるのなら、それはきっとあなたの勘違いね。残念だけど後悔は微塵もないわ。―――でも、そうね…むなしいわね」

そう、ただむなしいのだ。結局あの女と男の結婚式をぶち壊してやっても、私は幸せにはなれないと気がついたから。あの幸せだったころには戻れないと思い知ったから。
男は私の答えに納得したらしい。「ほうかあ」とだけ呟いて黙り込んだ後、唐突に言葉を落とした。

「それやったら、そのむなしさ、俺が消してやろうか?」
「は?」

ニヤリと口の端を釣り上げて笑う男を思わず見上げる。発言の意味がわからないのだけれど、どう反応したらいいのかしら。

「少なくとも、あの男よりねェさんを幸せにできる自信あるで?」
「…!」

驚いた。この男、どうやら今日のことを知っていたらしい。そこで漸く男の手に私が即行でゴミ箱へと投げ捨てたあの引出物と同じものがぶら下がっていることに気がついた。服装も良く見ると上等なフォーマルスーツだ。
恐らく、私とあの男のことも知っているのだろう。紡がれた言葉から何となくそんな感じがする。

――さて、どうしたものか。考えながら男の顔を見つめた。そもそも出会ってすぐの男から幸せにする自身がある云々と言われても信じられないに決まっているではないか。
けれど私は、あの復讐劇で精神的に大きく疲労していたのか、正常な判断力がなかったらしい。

「それなら、よろしく頼もうかしら」

口から滑り落ちた言葉はいつもの私ならあり得ないような台詞で、言われた男もこんなにあっさり言われるとは思わなかったのか眼鏡の奥の眼が点になっている。
ふふ、と笑いがこぼれた。なんだか楽しくなるような予感がする。――私の勘はよく当たるのだ。


「で、あなたのお名前は?」


差し出した手に大きな掌が重なった。

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COMMENT

久々にカンナさんの小説!
たまんないっす姉さん!!←
2011/06/20(月) 22:55:21 | URL | 加月ケイ #- [Edit
わーい!
そう言ってもらえると嬉しいよ…!
2011/06/21(火) 23:06:10 | URL | 桐嶋カンナ #/QjCk4EU [Edit

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