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2008.01.29 *Tue

うさぎのぬいぐるみと私

続き。

***

「(動いて…っ!)」





「みっちゃん――ッ!!!!」





男のナイフが振りかざされた時、私と男の間に聞きなれた声とともに何かが入り込んできた。





「ぇっぁ、ああ…っサギさ、――!?」
「みっちゃん…、みっちゃん大丈夫?」


男は小さく舌打ちをすると、サギさんの腹に刺さったナイフをそのままに走り去っていく。
けれど私は悲鳴すらあげることができなくて、ただサギさんの腹を見つめていた。


「みっちゃん…、櫁夏、しっかりして」
「っ…!サ、ギさ…!サギさん…っ」
「僕は大丈夫だよ。それよりも、みっちゃんは怪我はない?」
「ないよっ…、サギさんが守ってくれたから――ッ」


やだやだやだ。
サギさん、血が止まらないよ。

どうすればいいの?

どうしたらサギさんを助けられるの?


「みっちゃん、泣かないで」
「ひぐっ‥サギさぁん…やだよ‥っぅぇ」


逝かないで、どこにも。
ここにいて。

サギさんは泣きじゃくる私を見てとても困ったように笑った。


「みっちゃん、きいて」
「やだっ!誰か‥誰かきてッ!」
「お願いだから、みっちゃん。僕の話を聞いて」
「ふ、ぅえ…サギさん、やだよ…話なら明日聞くから、だから、やだぁ…っ」

「櫁夏、お願いだよ」


なんでこういう時に名前を呼ぶの。
なんでこんな時まで笑うの。


「僕ね、みっちゃん。みっちゃんを守るために、みっちゃんのとこにやってきたんだ」
「守るって、なんで…」

「みっちゃん、僕はね。君と一緒にいられて楽しかったよ。また君に会えてとても嬉しかったよ。捨てられたときは悲しかったけど、みっちゃんのこと恨んでなんかないよ」

「っ…!

うーちゃん、なの?」


信じられない。
だって、うーちゃんはウサギのぬいぐるみで、ぬいぐるみは動かないし話さないし、それに人間にはなれないんだよ。

サギさんはそんな私の疑問を見透かしたように言葉を紡いだ。




「捨てられたとき、僕はずっと泣いてた。

“みっちゃん。みっちゃん、どこ?”ってずっと。

そしたら、拾われたんだ。

――神様に。


神様は僕にチャンスをくださった。

みっちゃん、みっちゃんの前に僕が現れたのはみっちゃんを守るため。


みっちゃんの命はね、本当は今日までだったんだ。


だから僕は神様にお願いして、人間にしてもらった。

ただ一度人間になってしまうともう元には戻れない。

僕はそれを承知で、ここにきた。


ただみっちゃんに会いたくて、みっちゃんを守りたくて。


だからね、みっちゃん。泣かないで。

僕はみっちゃんに会えて幸せだったし、みっちゃんが死ななくて良かったと思ってる。


みっちゃん…、櫁夏、笑って。


僕は櫁夏が笑ってる顔が、一番好きだよ」


言い終えて、やっぱりサギさんは笑った。


「うーちゃん……サギさん、私もね、サギさんが好きだよ。大好き」


笑顔になってる?
涙でサギさんがかすんで見えるよ。

サギさん。

サギさん、大好きだよ。


「みっちゃん、ありがとう」


僕を忘れないでいてくれて、ありがとう。


サギさんがとてもきれいに微笑んでその瞼を閉じた瞬間、彼を柔らかな光が包み込んだ。
光がしぼんでいき再び暗い景色が戻ってきた時サギさんはもうそこにはいなかった。
代わりにそこにあったのは


「うーちゃん…」


白いウサギのぬいぐるみ。
所々綿が飛び出たうーちゃんをそっと持ち上げる。


「大丈夫ですか!?」
「櫁夏ちゃん、何があったの!?叫び声が聞こえたけど…」
「おばさん…。通り魔に、襲われて…」


近所の顔見知りのおばさんがお巡りさんを連れて走ってきてくれた。

そのあと交番に行き一通りの説明をしながらも私はサギさんのことは黙っていた。
ただ、ぬいぐるみが私を守ってくれたとは言ったけれど。
警察官の人は納得したようなしていないような微妙な顔をしていた。


わかってくれなくてもいい。

私だけが彼を憶えいればいい。




サギさん。





ありがとう。











***











「ミツ~?でかけるの?」
「うん、公園に行ってくる」
「そう。気をつけてね」

「行ってきます」


サギさん、私ももう大学生だよ。
サギさんがいなくなってから一年が過ぎて、
サギさんと出会った桜の季節がまたやってきたんだよ。
時間の流れって早いね。




サギさん、私ね。

勝手にサギさんのこと待ってるから。

たとえサギさんが来なくても、私がサギさんのこと諦めるまで、ずっと待ってるから。


だから、また一緒にいっぱい話そう。

話したいことがいっぱいあるんだ。




「桜が、きれいだよ」


サギさん。




――みっちゃん。




風に吹かれて彼の声が聞こえたような気がした。
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